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2024.10.07

こんにちは。山﨑晴太郎です。

今回はこの秋にヨーロッパの各地で行われる僕の作品の展示について、お知らせします。

Fringe Warsaw

これはもう始まっている展示です。

ワルシャワで毎年開催されているワルシャワ・ギャラリーウィークエンドという現代アートのイベントがあります。ギャラリーウィークエンドというのは、ある都市のギャラリーが時期を決めて集中的にイベントを開催するお祭りのようなものです。ベルリンとロンドンのものが有名ですが、それ以外にもパリ、バルセロナ、ミュンヘン、ストックホルムなどあちこちで行われています。東京アートウィークみたいなものですね。

そのワルシャワ・ギャラリーウィークエンドの関連企画として、固定のギャラリーを持たないキュレーターやアーティストが行う展覧会やイベント群、「フリンジ・ワルシャワ」というものがあります。今年はなんと82もの企画が行われているそうです。

僕の作品はこの中の一つ、”Czym wypełnić puste pomniki?”というグループ展で展示されています。日本語に訳すと「空洞の記念碑をどのようにして埋めるのか?」となります。

今回出展しているのは「声の余白」というシリーズから2点です。

会期は10月13日までです。

Hošek Contemporary

11月5日から17日まで、ベルリンのHošek Contemporaryというギャラリーで個展を開催する予定です。レセプションは11月5日の18時からです。もしもこのタイミングでベルリンにいらっしゃるという方は、是非いらしてください。

この個展のタイトルは「Contour of Yohaku」です。

「余白の輪郭」というような意味です。

ご存知のように僕は「余白」という概念に非常に強いこだわりがありまして、1月に出したビジネス書のタイトルは『余白思考』でしたし、これまでに発表したアート作品でも余白を要素として取り込んだものは少なくありません。以前にカリフォルニアのローズヴィルで開催していただいた個展では「こぼれ落ちた時間 (Time Spilled Over)」というタイトルで、僕たちの時間認識からこぼれ落ちてしまうような時間と、そこに存在している何かをテーマにしましたが、今回は音や言葉の周囲にある余白をテーマにした個展を企画してみました。

企画書に書いたのは以下の文章です。原文は英語ですが、ここでは日本語の文章として読みやすいように少し言葉を補ったりもしています。

余白とは日本の伝統的な美の形式です。

余白は14世紀頃から日本の絵画やパフォーミングアーツ(能楽)で用いられるようになりました。余白とは大胆な省略によって、省略されたものたちよりも遥かに多くのものを見る人に想像させるという技法です。たとえば歌川広重の描いた浮世絵には、しばしば画面の上端から垂れ下がる木の枝が描かれていますが、見る人はその枝の存在によって、画面の上方向に広がる空間を想像します。また長谷川等伯の「松林図」では、画面の中の松の木と松の木の間に何も描き込まれていない広大な領域が存在しています。等伯は敢えて何も描かないことで、奥にある広大な空間を想像させているのです。ご存知のように、こうした技法の一部はクロード・モネなどの印象派の画家たちも浮世絵から学んで取り入れています。

このような表現技法を、現在の日本では余白と呼んでいます。余白は曖昧さや儚さを伴って、独特の美を生み出します。

日本人は西洋の美術と出会うまで、自分たちの美意識が西洋の美意識と異なることに気づいていなかったので、この美意識には名前すらありませんでした。余白とは西洋のタイポグラフィのmarginの翻訳語として考えられた言葉ですが、今では美術の用語としても使われています。

余白はスイス・スタイルのタイポグラフィの広大なマージンに表面的には似ています。しかしながらタイポグラフィのマージンは文字へと視線を誘導するための技法なので、日本の余白とは違う美意識なのです。

私はこの「余白」の概念を、アートを通して社会学的な空間にまで拡張しようとしています。 すべてが言語化される以前の社会に存在した曖昧さ。その社会学的機能と美。これらをアートによって表現出来ればと思っています。

「八百万の痕跡」を野外に設置して撮影しました

「八百万の痕跡」の掛け軸バージョンの1点として、長さ30メートルの掛け軸を作ってあったのですが、以前からこれを森の中に置いて撮影してみたいというイメージがありました。春にロケハンをして、初夏には撮影出来るかと思っていたら台風でリスケ。さらに8月にもまた台風でリスケで、三度目の正直でようやく撮影が出来ました(晴太郎じゃなくて雨太郎ですねなんて笑われていました)。

撮影場所は多摩ニュータウンの外れ、稲城市の城山公園というところです。ここは色々なロケで使われる公園だそうで、僕が撮影した場所は岩井俊二監督の「花とアリス」でも使われたと聞きました。

ご協力いただいた稲城市観光課、そして稲城市観光協会の皆さん、ありがとうございました。

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