2025.11.27
こんにちは、山﨑晴太郎です。
すっかり秋が深まりましたね。この数ヶ月は制作と移動が重なり、少し息つく暇もないほどバタバタしていました。久しぶりのメルマガ、どうぞお付き合いください。
1:Larnaca Biennale 2025で作品展示を行いました
この秋、キプロス共和国・ラルナカ市で開催された Larnaca Biennale 2025 “Along lines and traces” の招待アーティストに選んでいただき、「8 million traces / 八百万の痕跡」を出展してきました。僕自身の滞在は、1ヶ月の会期の中で3日間ととても短い滞在でしたが、久々に“遠くへ来た”という感覚を強く味わった旅でした。

キプロスと聞いて、すぐに地図の位置が浮かぶ人は多くないかもしれません。地中海の東端、トルコ・シリア・エジプトに囲まれた島国。その南半分がキプロス共和国で、首都はニコシア。ラルナカは島で唯一の国際空港がある“玄関口”の街です。
パリとロンドンの距離と同じくらい近くにシリアやトルコがある。地図を広げると、その“境界の近さ”にハッとさせられます。
そして、驚くほど長い歴史。紀元前13世紀のキティオン王国から、エジプト、ペルシャ、マケドニア、ローマ、ビザンチン、十字軍、オスマン帝国……。教科書で見た名前が次々と重層的に折り重なっていて、まるで“世界史の地層”の上に立っているようでした。
そんな土地で、僕にとって初めての“ビエンナーレ出展”。自然と気持ちが高揚しました。
街に降り立つと、海風がふっと抜ける南欧らしい空気。ゆっくりと時間が流れる、あの独特の“リゾートの緩さ”がありました。展示会場のギャラリーでは、30メートルの「八百萬の痕跡」が尖頭アーチの空間と重なり、想像以上の存在感を発揮していました。

この30メートルのインスタレーションはヨーロッパでの反応がとても良く、昨年ベルリンで行った個展でも展示をしています。日本では以前、稲城市の城山公園で撮影したのですが、いつか“森の気配の中で呼吸する八百萬”をお披露目できたらと思います。
現地では在キプロス日本大使館の方にもお会いし、公式Facebookで作品を紹介してくださいました。こうした“土地と人の縁”が広がっていくのは、とても嬉しい瞬間ですね。

そしてもう一つの目的は、町外れの キプロスにある湖の撮影。
今年から始めたビデオアートシリーズ「What was Almost There / そこに在りかけたもの」を制作するためです。

「What was Almost There」は、固定カメラをおよそ40%の再生速度で流しながらカットをランダムにジャンプさせ、撮影と同時にフィールドレコーディングで録音したその土地固有の音のソノグラフ(音の形)を重ねていく作品です。

そこに“存在しているもの”と、“存在しかけて消えたもの”。
波紋になるものと、波紋になる直前で失われたもの。
そのわずかな差異に耳を澄ます——そんなシリーズです。
今回は、遠いキプロスの湖。まったく異なる風土が、どう“もう少しで存在するはずだった気配”を浮かび上がらせるのか。どうぞお楽しみに。
【https://seiyamazaki.com/artworks/what-was-almost-there/】
2:第2回「余白のアートフェア福島広野」開催します
1月に初開催した「余白のアートフェア福島広野」が、今年は少し早めの 12月6日・7日 に開催されます。
このアートフェアは、僕の著書『余白思考』を基点に、あえて“決めすぎない”ことをデザインした実験的なフェアです。
余白=不完全ではなく、未知の可能性の領域。

ブース配置にもキャプションにも、あえて“空白の部分”を残しています。参加アーティストがその余白に自分の解釈を差し込むことで、予期しない共同作業が自然と生まれていく。その有機的な動きこそ、余白のアートフェアの醍醐味です。
第1回では、アーティスト同士の偶然の出会いから多くの即興的コラボが生まれました。今回もすでに水面下でいろいろ企まれているようです。
僕は「Still Voice」から「ONION」「MELON」「BREAD」「GARLIC」、そして「What was Almost There」を出展します。

今年のコンセプトは、未決の風景。“何かが始まる瞬間”を共有する場になっています。
3:マリア・プロシュコウスカさんと対談しました
YouTube「文化百貨店」の企画で、今回のウクライナ現代アーティスト企画展示をキュレーションしてくださったマリア・プロシュコウスカさんと対談を行いました。
現在は広尾の聖心女子大学グローバルプラザで展示中。広野町でも展示されます。

マリア・プロシュコウスカさんは、1986年生まれ、キーウ出身の現代アーティストで、今年ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズを修了。ロシア侵攻以降、ウクライナの若手アーティストが欧米へ避難し、結果的に新しい学びと交流が始まっている——という話が印象的でした。
今回ウクライナから参加しているアーティストの8名は、若手から国際的に評価されるアーティストまで幅広く、「Growing Through Cracks(ひび割れから芽吹く)」という名のコレクティブで活動しています。“失われたものを、アートの力で補完する”という強い意志を持ったプロジェクトです。ぜひ、多くの人に応援していただけたらと思います。