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2026.06.08

こんにちは。山崎晴太郎です。

前回の配信から、ずいぶん時間が空いてしまいました。昨年11月以来のメールマガジンになります。

この半年も、いくつもの場所で、いくつもの作品が動いていました。福島、カリフォルニア、イギリス、アリゾナ、そして東京。少しずつではありますが、自分の作品や活動が、さまざまな土地の空気と結びつきながら広がっていることを感じています。

今回は、この半年のご報告をまとめてお届けします。

 

1:余白のアートフェア福島広野 Edition 2
「未決の風景」ありがとうございました

 

昨年12月に開催された「余白のアートフェア福島広野 Edition 2『未決の風景』」は、無事に会期を終えることができました。

残念ながら、諸事情により僕自身は会場に行くことができなかったのですが、売上は第1回を上回り、会場内で展示されていた、愛☆まどんなさんによる、広野町復興チャリティ寄付金付き複製画も好評だったと聞いています。

あらためて、出展してくださったアーティストの皆さま、現場を支えてくださったボランティアの皆さま、そして運営スタッフの皆さまに、心より感謝申し上げます。

余白のアートフェアは、広野町における「アートによる復興」のひとつの実験として始まりました。

すべてを最初から決め切るのではなく、未決のまま残すこと。
その余白に、人が入り、作品が入り、偶然が入り、思いがけない風景が立ち上がっていくこと。

第2回までやり切ったことで、地域の皆さまからも、少しずつ信頼をいただけるようになってきたのではないかと感じています。

尚、第3回については、現時点では「未定」です。

ただ、これは決して後ろ向きな意味ではありません。地域の方々や、国内外のアーティストから「次も期待しています」「次は日本に行きます」といった声をいただくなかで、どうすればこの試みを無理なく、持続可能な形で続けていけるのか。いま一度、丁寧に考える時間が必要だと思っています。
僕自身の関わり方も、これまでの「ディレクター」という立場から少し変わっていくと思っています。

今後は、今年3月から始まった「ピアノを自然に還す実験2」を核に、広野町での活動へと軸足を移しながら、アートフェアとも密接に連携していく形になるのではないかと思っています。

 

2:広野町で「ピアノを自然に還す実験2」を開始しました

僕が心から敬愛している、故・坂本龍一さん。

最後のアルバム、「12」の作曲で使用された、彼の遺品であるスタインウェイのアップライトピアノを、時間をかけて「自然に還す」プロジェクトを、坂本図書とセイタロウデザイン、そして広野町の協力によって開始しました。

場所は「広野町文化交流施設-ひろの未来館-」の前庭です。

ひろの未来館は、広野町のアーティスト・イン・レジデンスでも毎年使われている、町の文化事業の拠点となる場所です。その前庭の土の上に、ピアノをそのまま接地しました。

プロジェクトの開始日は2026年3月11日。

東日本大震災から15年の節目の日です。

ピアノは、どなたでも近づいて触れることができます。ただし、施設が閉まる夜間と月曜日はセキュリティが作動するため、フェンスの外からの観覧のみとなります。

音を奏でるための道具であったピアノが、雨に打たれ、風にさらされ、少しずつ変化していく。

それは、朽ちていくというよりも、別の時間の中に入っていくことなのだと思います。
人がつくったものが、もう一度、自然の時間へと戻っていく。

時間と自然と人と芸術との関わりについて、その過程を観察しながら、長い時間をかけて思考していきます。

 

プロジェクト公式サイト
https://piano-nature2.com/

 

3:カリフォルニアで二つのグループ展に参加しました

サンフランシスコ近郊にある二つのアートセンターで、ほぼ同時期に開催されていた二つのグループ展に参加しました。

ひとつは、セバストポール・センター・フォー・ジ・アーツで開催された企画展「Pulp · Paper · Book」です。

公式URL
https://www.sebarts.org/pulp-statements

僕が出展したのは、2024年に制作した「Stories Not Used “OLD TESTAMENT” BOOK OF GENESIS」です。
https://seiyamazaki.com/artworks/snu-genesis-book/

もうひとつは、ベニシアという町にあるアーツ・ベニシアで開催された企画展「Making Your Mark」です。こちらには、2018年に描いた「具象の輪郭」という作品が選ばれました。

https://seiyamazaki.com/artworks/outline-figurative/

公式URL
https://artsbenicia.org/making-your-mark/

セバストポールもベニシアも、以前に個展をさせていただいたローズヴィルの近くにあります。

不思議なことに、僕の作品はサンフランシスコ・ベイエリアの空気と相性が良いのかもしれません。西海岸の光や、少し乾いた風、そして自由さの中にある静けさ。そうしたものと、自分の作品がどこかで呼応しているような感覚があります。

 

4:今年も Fringe Arts Bath に出展します

昨年に続き、今年もイギリスの「Fringe Arts Bath」に作品が選出されました。

参加するのは、「The 2020s: Sacred Brands and Disposable Gods」という企画展。

出展作品は、またしても「未来からの化石」シリーズ。今回は「HWRMES」「Supreme」「CHANEL No.5」を展示します。

このシリーズでは、現代の消費社会を象徴するブランドやプロダクトを、未来の考古学的遺物のように扱っています。

いま、これほど強く人々の欲望や信仰を集めているものが、未来のどこかでは、ただの欠片として掘り起こされるかもしれない。そんな想像から生まれた作品です。

会期は5月22日から6月6日までです。

 

公式URL
https://www.fringeartsbath.co.uk/brands

 

5:Sidney Nolan Art Prize Exhibition に参加します

20世紀オーストラリアを代表するアーティストの一人、シドニー・ノーラン。その名を冠した財団が主催する「Sidney Nolan Art Prize Exhibition」に参加します。

会場はオーストラリアではなく、イングランドです。

しかもイングランドの中でも最も西にあるヘレフォードシャー。そのさらに西の外れにある「The RODD」という広大な農園が会場になります。

 

ここは、晩年のシドニー・ノーランが暮らした場所だそうです。農園の外縁を流れるハインドウェル川という小川が、そのままイングランドとウェールズの国境になっているとのこと。

国境のそばの農園。
その中にある穀物倉庫。

そこに、僕は「沈黙の文法」というインスタレーションを設置します。

この作品は、いわゆる「ビニール傘」が路上に打ち捨てられている光景をモチーフにしています。黒い線は、広重の浮世絵のような雨。金色のスカルプチャーは、傘にあたる雨からフィールドレコーディングで収集したソノグラフを彫刻にしたものです。

今回の会場となる穀物倉庫は、雨漏りしているそう。

だから、もし雨の日に訪れることができたなら、それはこの作品にとって、いちばん自然な鑑賞体験になるのかもしれません。

会期は7月11日から10月4日までです。

沈黙の文法
https://seiyamazaki.com/artworks/the-grammar-of-silence/

公式URL
Sidney Nolan Art Prize Exhibition

https://artopps.co.uk/opportunities/sidneynolanopen

 

6:東京・稲城市のギャラリー企画展に出展します

以前、「八百万の痕跡」を稲城市の城山公園で撮影させていただいたご縁から、その城山公園から歩いて1分ほどの場所にあるギャラリーの企画展に出展することになりました。

ご一緒するのは、CHiNPANさん、花塚美早さん。お二人とも「余白のアートフェア福島広野 Edition 2『未決の風景』」にも出展されていた水墨画家です。

水墨画というと、伝統的な形式を思い浮かべる方も多いかもしれません。けれど、墨の濃淡、線の揺らぎ、余白の使い方には、現代アートとしての可能性がまだまだ眠っていると思っています。

僕自身も、東洋的な余白や気配の表現と、現代的な視覚言語のあいだを行き来しながら制作してきました。今回の三人展が、そうした「水墨」の新しい見え方につながれば嬉しいです。

企画展
「現代アートとしての水墨画:CHiNPAN・花塚美早・山崎晴太郎 三人展」

会期
2026年6月12日〜2026年7月10日

開廊時間
9:30〜17:30
日曜・祝日休み
入場無料

参加アーティスト
CHiNPAN
花塚美早
山崎晴太郎

公式URL
https://sdtricks.net/G372/archives/282

 

7:NightVisions: AMBER

アメリカ・アリゾナ州フラッグスタッフで開催される、夜の暗さをテーマとした企画展「NightVisions: AMBER」に、「陰翳礼讃」が招待されました。

フラッグスタッフは、州都フェニックスから北へ進んだ場所にある町で、グランドキャニオンの南側に位置しています。まさに、暗い夜空と星の気配が似合う土地です。

「陰翳礼讃」は、これまでアムステルダム、青山スパイラルホール、広野町で展示してきました。今回が4回目の展示であり、アメリカ大陸では初めての展示となります。

この作品は、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』から着想を得ながら、文字が文字として定着する前の存在をつかまえることで、気配としてしか存在し得ない見えないものの中にある美しさを考えたものです。

明るく照らすことだけが、世界を理解する方法ではない。
むしろ、暗さの中にこそ、ものの気配や輪郭が立ち上がることがある。

アリゾナの夜の中で、この作品がどのように見えるのか、僕自身もとても楽しみにしています。

陰翳礼讃
https://seiyamazaki.com/artworks/in-praise-shadows/

会期は6月27日から9月26日までです。

フラッグスタッフはグランドキャニオン観光のゲートウェイのひとつでもあります。この夏、グランドキャニオンを訪れる予定のある方は、ぜひお立ち寄りください。

https://www.instagram.com/coconinoarts/

https://coconinoarts.org/exhibitions/nightvisions-amber/

 

 

この半年を振り返ると、作品が少しずつ、遠くの土地へ運ばれていった時間だったように思います。

福島の土の上に置かれたピアノ。
カリフォルニアの紙と本の展覧会。
イギリスの農園にある雨漏りの穀物倉庫。
アリゾナの夜の暗さ。
そして、東京・稲城の水墨の余白。

場所が変わると、作品もまた少しずつ違う呼吸を始めます。

これからも、そうした土地との出会いを大切にしながら、制作を続けていきたいと思います。

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