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2026.09.25

こんにちは。山﨑晴太郎です。

今年の夏は、日本でもヨーロッパでも、自然の力の大きさを改めて感じる季節でした。

各地で災害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

作品は世界を旅していますが、その土地で起きている出来事や、そこに流れる時間とは無関係ではいられません。

この3か月も、いくつかの国で作品を展示する機会をいただきました。同じ作品でも、展示される場所が変わると、その意味は少しずつ変化します。

今回は、そんな「場所との対話」を中心にご紹介します。

 

1.シドニー・ノーラン・アートプライズ

 

現在、イングランドとウェールズの境界にある農場「THE RODD」で、《沈黙の文法》を展示しています。

この作品は昨年の上海K11で生まれました。二度目となる今回は、展示空間がホワイトキューブではなく、古い牛舎でした。

長い年月を経た木材や石壁、農場の空気。そんな場所に作品を置くと、同じインスタレーションでもまるで別の表情になります。

今回は天井が高く、通常の方法では設置ができなかったため、スタンドを立ち上げ、そこから糸とスカルプチャーを吊るす新しい構成を採用しました。

最初は、「ビニール傘」という日本では当たり前の文化がイギリスで伝わるだろうか、と少し不安もありました。でも実際には、作品そのものが持つ「不在」や「痕跡」というテーマを、多くの方がそれぞれの経験と重ねて受け取ってくださっているようです。

作品は10月4日まで展示されています。そしてこの作品は、これからも世界各地で展示を続けていきたいと考えています。

作品は購入していただくことも出来ます。

作品ページ

https://sidney-nolan.squarespace.com/2026-exhibition/p/seitaro-yamazaki-the-grammar-of-silence

「沈黙の文法」はこれからも世界各地で様々な形で展示していきたいと考えています。もしもこの作品を展示してみたいというギャラリストやキュレーターがいましたら、ご連絡ください。

 

2.CICA MUSEUM「Text-ure 2026」

 

7月には韓国・CICA MUSEUMの企画展「Text-ure 2026」で、《Hesitation of Image》シリーズを展示しました。この企画展はtextという文字列にフォーカスしたもので、text, context, textureといったキーワードで作品を集めたものです。

このシリーズでは、写真を印刷したあと、まだ乾ききっていないインクを意図的に流しています。

写真は、世界を「固定」するメディアです。でも、僕たち自身の視覚は、決して固定されてはいません。

見て、忘れ、見逃し、また別のものを見る。その揺らぎこそ、本来の身体の視覚なのではないか。

そうした、「語られることのない」「記憶されることのない」視覚経験の持つ価値、意味をどのようにして考えることができるだろうか。そんな思いから制作を続けているシリーズです。

公式URL

https://cicamuseum.com/text-ure-2026/

 

3.NAFAS TOKYO 2026

 

北千住・BUoYで開催されている「NAFAS TOKYO 2026」に、《Still Voice》シリーズから《柘榴》を展示しています。

今回の作品選定は、ニューヨーク The Invisible Dog Art Center のキュレーター、ルシアン・ザヤンさんにお願いしました。彼が選んだのは《柘榴》。柘榴という果実は、ユダヤ教、仏教、ギリシャ神話、イスラム教など、世界中で特別な意味を与えられてきました。

このシリーズは昨年の「余白のアートフェア福島広野 ed.2」でも展示しました。近世ヨーロッパで盛んに描かれた静物画、特に食べ物を描いた静物画を引用したシリーズです。静物画もまた写真と同様、対象の時間を静止させるという視覚の試みですが、それを見る人々の内面では常に様々な思考や感情が内なる声となって響いていたはずです。このシリーズでは、食べ物の写真の上に、その食べ物にまとわりついていた音の痕跡を、ソノグラフ図形という形で重ねています。それに加えて「Hesitation of Image」と同じように特殊な遅乾性のインクを使ってソノグラフ図形を流れさせることで、静止させられた時間の中にある極度の明瞭さに抗おうとするもう一つの時間を表現しています。

ひとつの果実が、文化によって全く異なる物語を持つ。そのこと自体が、このシリーズのテーマとも重なっています。

会期は9月4日から9月26日までです。

公式URL

https://buoy.or.jp/news/nafas-tokyo-2026/

The Invisible Dog

https://www.theinvisibledog.org/all/2026/9/4/nafas-festival-tokyo

 

4.ロンドン地下鉄ペッカム・ライ駅旧待合室「Everything then is now」

 

9月にはロンドン地下鉄ペッカム・ライ駅で、《八百萬の痕跡》を展示しました。

50年以上閉ざされていた待合室という場所で、時間の堆積そのもののような作品がどのように見えるのか、とても楽しみにしていました。この空間は50年以上前に封鎖されてずっと使われていなかったそうです。この空間で開催される企画展「Everything then is now」に「八百萬の痕跡」のロングバージョンを出展しました。一昨年のベルリン個展、昨年のラルナカ・ビエンナーレに続き今年もヨーロッパに呼ばれました。

ペッカム・ライ地区は若手アーティストや移民コミュニティが集まる下町という雰囲気のエリアだそうです。

公式URL

https://spira9.art/exhibition/othering/everything-then-is-now

 

5.VENICE INTERNATIONAL ART FAIR – 25TH EDITION 2026

 

以前に何度か別の会場に出展したITS-LIQUIDさんのお声掛けで、今年のヴェネチア・ビエンナーレに合わせて開催されるアートフェア「VENICE INTERNATIONAL ART FAIR」に「Still Voice」シリーズから「大蒜(にんにく)」を出展することになりました。

こちらは柘榴とは違って、様々な宗教で禁忌とされつつも薬効は認められてきたという、独特の立ち位置の食べ物です。

会場はPalazzo Albrizzi-Capello, Venice。会期は9/18から10/2まで。

公式URL

https://www.itsliquid.com/opening-venice-art-fair-25.html

 

6.ミシガン州ルディントン「CHEW ON THIS」

 

ミシガン州ルディントンのアートセンターで10/2から始まる、これも食べ物をテーマとした現代アート展「CHEW ON THIS」に「Still Voice」シリーズから「林檎」を出展します。

「林檎」はご存知のようにキリスト教では原罪の象徴となっています。

《Still Voice》は、それぞれ異なる食べ物を扱っていますが、それは食材そのものではなく、人がその食べ物に与えてきた意味を見つめるシリーズでもあります。

柘榴。大蒜。林檎。土地が変わると、それらの意味もまた少しずつ変わっていきます。その変化を、作品自身も楽しんでいるように感じています。

公式URL
https://www.ludingtonartscenter.org/chew-on-this

 

 

今年は気が付けば、多くの作品がヨーロッパやアメリカを旅しています。

でも、作品が本当に移動しているのは「場所」ではなく、「文脈」なのかもしれません。

展示する場所が変わるたびに、作品は新しい読み方を獲得し、自分自身もまた作品を作り直しているような感覚になります。

来年に向けても、少しずつ新しいプロジェクトが動き始めています。また皆さんにご報告できる日を楽しみにしています。

季節の変わり目です。どうぞご自愛ください。

 

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