《In Praise of Shadows / 陰翳礼讃》は、谷崎潤一郎が日本独自の美意識を論じた随筆に着想を得たインスタレーション作品である。
影を取り払うのではなく受け入れることで、光と音、和紙の文字、香りが重なり合い、読むのではなく身体で感じ取る詩的な体験を生み出す。
和紙を切り抜いて作られた文字は、背後からの光によってそのプロポーションが浮かび上がり、薄暗い空間に溶け込むように輪郭をにじませる。
その影は知覚と消失のあわいを漂いながら、静と動、光と闇、静寂と抑制の気配を映し出す。
あえて可読性を崩したタイポグラフィは、文字としての形をぎりぎりに保ちながらも曖昧で不確かな存在となり、漢字の読解的意味合いから逃れ「陰翳礼讃」の思想を体感的なものへと導く。
ここでは、明晰さや明確な形ではなく、影の存在そのものの中に美が宿る。文字、光、音、香りが交錯し、言葉を超えた感覚的な意味を立ち上げるのだ。
本作は、沈黙や曖昧さ、そして言葉にできないものへと開かれた、多感覚的な芸術体験への招待だ。







