《The Image Left Unclaimed / 残されたイメージ》は、視覚イメージの構造的な崩壊と、それでもなお残存し続ける痕跡の在り方に焦点をあてた平面作品のシリーズである。本作では、もともと写真として記録された像が、印刷プロセスの中で物理的に破壊・変質され、像としての可読性を失っている。
インクは定着を拒否され、垂れ、滲み、剥落する。その結果として、視覚的な「対象」はほとんど判別不可能な状態となり、イメージはもはや表象ではなく、痕跡そのものとして立ち現れる。この構造は、写真メディウムが本質的に抱える「記録/喪失」の二項対立を転倒させる。像はもはや記憶や再現のための媒体ではなく、“誰にも引き取られなかった視覚の残余”として、時間と物質性の中に残留する。
「残されたイメージ」とは、視覚が意味や言語に還元される以前の状態に関わる問いであり、アーカイブされることも、記号として回収されることも拒むイメージの〈余白的実在〉である。それは、記録不可能性そのもののヴィジュアルな証拠であり、像が像であることを放棄した後にのみ発露する美的・倫理的領域への接近である。



