この作品は、様々なニュース動画の中で被写体が語っている声と、それらの声の裏側にある想いとの関係の考察である。

動画のキャプチャ画像の上に重ねられているのは、これらの動画の音声のソノグラフから抽出した様々な図形である。ソノグラフとは音響を周波数帯ごとに分解し、それぞれの周波数帯における音量の強弱を濃淡で表現したグラフである。本来ソノグラフは人の声や動物の鳴き声、楽器の音などをグラフ化するための装置であるが、この作品において私が抽出しているのは、声と声の間、つまり声と雑音の境界領域に存在する何かのグラフである。

私は日本のアーティストとして、日本の伝統的な美の領域の一つ「余白」を現代アートの世界で再定義することを試みている。「余白」とは西洋のnegative spaceとは異なり、何かは存在するのだけれど敢えてそれに形を与えないままにされている空間を指す。

本作品においてキャプチャ画像の上に現れているのは、メディアからこぼれ落ちてしまった、被写体となる人物たちの声と声の間にある何かである。それらは、彼・彼女らが敢えて言葉にしなかったものかもしれない。あるいは、言葉にすることが出来なかったものなのかもしれない。いわば、彼らの声の「余白」である。